歳を重ねながら音楽の表現で何が伝わっていくのか、何を伝えたいのかと考えるようになった。体感する感動は個人によって差異がある。そもそも好きか嫌いかで見たいものも聞きたいものも自然と選んでしまうのが人間だ。そんなことを思いつつ今回の朗読は歌手にお願いした。上手にテクニックで読むことより声の響きに魅力のある人、ハッと思いついたのが前回HABUBANのゲストで唄ってくれた吉田歩さん。朗読経験は全くない彼女は中性的 なハスキーボイスと持ち前の体当たり精神で作品にぐっと色を添えてくれた。ダンサーの東海林靖志さんとは北海道時代にご一緒するはずがリハのみで終わって以来のコラボとなりフリーで叩く私のへなちょこリズムに直ぐ様「振り」をつけてくれ、そこから飯田雅春さんが「作曲」をした。誰が中心でもなくお互いの表現がドロ団子の様に固まって出来上がっていく。女性ダンサー高橋真帆さんと東海林さんの長年の息の合い方はもちろん足の指先にまで及ぶ繊細な表現力に圧倒された。呼吸のコントロール、暗闇で飛び交い浮遊する二人と音楽の融合。ふと真帆さんの雰囲気から大正時代の髪型を連想した。彼女なら絶対似合う!そこから大正デモクラシーにヒントを得て作品全体の色彩を固めていった。なんだか楽しい〜 照明は都内ダンススタジオでも珍しい壁に磁石で張り付くLEDライトをスマホのアプリで操作。そんなことをアナログの私一人でできる訳がないということで息子が登場。収録が終わるまで普通にスタッフと思われて妙な母としての安堵感。そして音楽は毎月セッションホストでお世話になっている本八幡のcooljojoで自主録音。田中信正さんの美しいピアノの音色をドラムがかき消してしまう、いやそれもあるがマイクが拾ってしまうのでバリケードじゃなくて板のパーティーションを立てる。板の向こうから空気を震わせてこちらに染み込んでくるハーモニカの音色にすっと肩の力が抜けた。とつとつと話しかけてくる言葉の様な説得力と遠い記憶の感情に誘導していくメロディーを吹くハーモニカの魔術師マツモニカさん。吹いていないとコミカル芸人?なんという振り幅!
「ダンスの映像を撮るからドラム叩いてね」とプロデューサーに言われて始まったこの作品制作。気がつけば働いていた(笑)
表現とは決めてかかるものじゃなくて感じるものを伝える努力、しかも独自の方法で。。
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